ファイアーエムブレムの生みの親である加賀昭三氏が開発したシミュレーションロールプレイングゲーム(SRPG)、ヴェスタリアサーガI 亡国の騎士と星の巫女をクリアしました。
ファミコン・スーパーファミコン時代のファイアーエムブレムファンの人には本当のお勧めの作品です。
そうでない人も、これを機会に加賀さんのゲームを体験して欲しいので、ヴェスタリアサーガをクリアしての感想を交えながら紹介したいと思います。
ヴェスタリアサーガは、こちらのサイトから無料で手に入れる事が出来ます。英語翻訳版はSteamで有料販売しています。
ファイアーエムブレムの生みの親である加賀昭三氏のゲーム
私は小さい時に遊んだファイアーエムブレムが本当に好きで、当時は時間を忘れてプレイに没頭したものです。加賀昭三氏はそんなファイアーエムブレムの生みの親です。
最近は新作を発表しなくなって寂しく思っていたのですが、同人ゲームとしてヴェスタリアサーガシリーズを開発しており、2016年に第一部がリリースされました。二部構成との事ですが、第二部は今だリリースされておりません。その代わり、外伝は2019年にリリースされています。
レトロなゲームです、対象は30歳以上(ただし内容はお子様向け)
http://site.wepage.com/vestariasaga/20160903224703
”主催者より”のページ(こちら)の記述では、明言は避けていますが、初期のファイアーエムブレムに近いゲームデザインであり、当時ファイアーエムブレムを遊んでいた世代向けの内容です。
私には小さい子供が居るので少し思うところがあるのですが、子供はレトロ感を気にしないんです。古い仮面ライダーやウルトラマン等も楽しそうに観ています。
ですので、加賀氏は対象は30歳以上と言っていますが、遊ぶ機会さえあれば今の子供でも十分に楽しめる内容だと思います。
うちの子供達も漢字が読めてルールを理解出来る年齢になったら、プレイする機会を作ろうと思います。
三部作
当初は「ヴェスタリアサーガI 亡国の騎士と星の巫女」、「ヴェスタリアサーガII」の二部構成だったみたいですが、最終的には三部作になるようです。
最初は外伝としてリリースされた「ヴェスタリアサーガ 外伝 シルヴァビルヒの聖なる剣」ですが、リメイク版から「ヴェスタリアサーガII シルヴァビルヒの聖なる剣」と改名されています。
シルヴァビルヒの聖なる剣もクリアしたので、こちらの記事で感想を掲載しています。
ストーリー
ヴェスタリアサーガはその名の通り、英雄伝説を年代記風に進めていくゲームです。私は戦記物が好きなので、ヴェスタリアサーガのストーリーはとても面白かったですね。
基本的な話の流れは、ヴェスタリア島での戦争や紛争を中心として展開していきます。その大きな流れの中に、各キャラクターが持つストーリーが織り交ぜられているという構成です。
ここからは若干のネタバレを含みます。
タイトルに、亡国の騎士とあるように、主人公のゼイドが使える王国は敗戦します。その後、亡命先の国で戦力を整え、王国を取り戻す旅に出る事になります。そして、ゼイドが使える王国の姫君であり、星の巫女でもあるアトルが、ゼイドの旅に同行するというのが話の本筋です。
星の巫女とは、神話の時代に封印された魔王マグルの封印の要となる存在で、星の巫女以外にも複数の巫女が登場します。また、魔王マグルを封印した英雄がヴェスタリア島内に国家を築いており、アトルを含むそれら王家の人間も、深くストーリーに絡んできます。
王国を取り戻す話とは別に、この魔王マグルの封印に関する話も同時に展開していきます。人間相手の戦争とは別に、魔人や竜を相手にする戦いが繰り広げられます。
今作の主人公のゼイドは、騎士としての能力は凄く高いですが、英雄の血統ではないので、魔人相手の戦闘では、力を発揮できません。そこで、王家の血統であるアトルとの関係性が重要になってきます。
ゼイドとアトルは余り面識がなく、旅の始まりの頃には結構な距離間があります。それが、旅を経て徐々に変わっていく様子が丁寧に描かれています。
ここまで読んで気になった方は、ぜひ実際にプレイして、ゼイドとアトルの旅を行方をご覧になってください。
魅力的なキャラクター
公式サイトでキャラクターの人気投票をしていますが、プレイし終わる頃には、思い入れのあるキャラクターが絶対に一人は出来るはずです。
キャラクターそれぞれの個性がきちんと描かれており、作家性が高い内容になっています。小説としてリリースされても面白いのではないだろうか?と思える程しっかりと仕上がっています。
キャラクターの絵柄が可愛いのもありますが、会話内容もしっかり作りこまれているので、キャラクターが持つ魅力に徐々に引き込まれていきます。
この辺りが加賀氏のデザインするゲームのキャラクターが愛される大きな理由だと思っています。
キャラクターに愛着を持つ切っ掛けは人それぞれ違うと思います。それは何気ない会話であったり、絵柄の趣味嗜好だったりするかもしれません。
気に入ったゲームキャラクターをメインで使いたいですよね。
ですが、加賀氏がデザインするゲームではゲーム内のトータル経験値に上限がある事が多いです。ですので、自然に気に入ったキャラクターを優先して強くしたいですよね。
全てのキャラクターを最大限まで成長させるのはかなりの難易度を求められます。(可能なんでしょうか?)なので、プレイヤーはキャラクターの成長には、取捨選択を求められます。
基本性能が高く強いキャラクターを集中的に育てて、楽にクリアを目指す人も居るでしょう。
ですが、殆どの人は気に入っているキャラクターの成長を優先するのではないでしょうか?
優先的に育てた結果、強くなり、活躍してくれます。そして、強くなる頃には、そのキャラクターのストーリーにも触れてより好きになっていく訳です。
せっかく頑張って育てたキャラクターには死んで欲しくないですし、前線に送りだして、活躍して欲しいものです。そうやってどんどん愛着が沸いていき、キャラクター愛が強くなるのだと思っています。
そして、私は加賀氏がデザインするSRPGの難易度を高くしている一番の理由だとも思っています。
固有の戦闘アニメーション
キャラクターの演出の1つとして特定の戦闘固有のアニメーションがあります。
これは初期のファイアーエムブレムにもありました。特定の武器を所持した時や、特定の戦闘の時だけアニメーションが変わるという演出です。
会話だけでなく、戦闘でもキャラクターに愛着が沸くような演出を入れてくるのはぐっと来るものがありますね。
特に最終決戦や、因縁の対決の時には非常に盛り上がるんですよね。
キャラクター愛が強いが故の高難易度
ステータスの強弱に関係なく、気に入っているキャラクターを育ててメインとして使っていきたい。ヴェスタリアサーガも私にそう思わせるゲームでした。
そして、キャラクターに愛着がある事はシナリオとも絡んで難易度を上げているとも思っています。
特定のキャラクターで戦いを挑んだ時にのみ発生するイベントや、特定のキャラクターが死亡していると発生しないイベントが存在します。
例えば、親を殺されたキャラクターが居るとします。そして、その親の仇と戦い、敵を取る機会があるとしたら、その親を殺されたキャラクターで止めを刺したいと思いませんか?
キャラクター固有イベントを発生させる為には、イベントが発生するキャラクターを前線に連れて行かないといけません。それはつまり、きちんとキャラクターを育てておかないといけないという事です。育っていない状態で、無理にイベントを発生させようとすると死ぬ事も多々あります。
全てのキャラクター固有イベントを確認する為には、全てのキャラクターをある程度育てておかないといけないのです。
ヴェスタリアサーガは、キャラクター専用武器が豊富なのもあり、戦闘でもキャラクターの個性を前面に押し出しています。危機的な局面を、専用武器のおかげで切り抜けられたら、そのキャラクターを頼りに思いますよね。そうやって徐々に愛着が沸いていくのかと思います。
まあ、気に入っているキャラクターを強くした挙句、突っ込ませ過ぎて返り討ちに遭うのはお約束ですね…
バトルデザイン(戦闘)
バトルデザインは、シンプルな設計になっているという印象です。SRPGを遊んだことがある人なら、直ぐに操作出来ると思います。
ユニット特性や武器での特攻とスキルがあり、更にはキャラクター専用武器が多いです。武器での3すくみはないです。
特攻は、飛兵には弓矢が有効、騎馬にはランスが有効といった感じです。痛打するだけなので、回避したり、先制攻撃で撃破する事で、被弾を避ける事での対応が可能です。
スキルのおかげで首の皮一枚繋がる事はあっても、それに頼りきりで最後までクリア出来るという事はないと思います。特攻が強いので、強いスキルを持っていても特攻されると負けます。
ヴェスタリアサーガの専用武器は攻撃回数が多かったり、回避が異常に高いか、待ち伏せスキルが付いている傾向にあるように感じました。専用武器を持っていても特攻されると弱いので、特攻への対策なのだと思います。
専用武器はとても強力ですが、武器には使用回数制限があるので、無双出来る機会は限られています。
それに、専用武器で無双出来るキャラクターばかり戦わせていると、経験値がそのキャラクターに集中してしまって他が育たないです。経験値が限られているというのは、こういうところでも上手く効いてきます。
戦術マップ
戦術マップはギミックやイベントが多かったです。
今作の特徴としては、花や湖など特定の場所に行くとアイテムが拾えたり、イベントが発生します。この手のギミックはファイアーエムブレムよりもラングリッサーに多かった印象があります。
鍵開けや宝箱、伏兵、増援は基本として、ストーリーに絡めたギミックや、防衛、攻城でのギミックと、多種多様なギミックが散りばめられていました。
単純にユニットを移動させて配置するだけの戦略ゲーム的な要素と、ストーリーを絡めたうえでのイベント要素を付けたした、戦術マップ攻略としての要素の2つが合わさっているのだと思います。今作は特に、戦術マップのギミックが多い印象ですね。
面白いので良いんですが、プレイ時間が長いのは絶対ギミックのせいです…
また、UIは余り凝っていないので特定の移動範囲の固定化や、敵の攻撃可能範囲を表示する機能などが無いです。最初出たファミコンのファイアーエムブレム程度のUIになっています。これは、プログラムはフリーのソフトウェアを使っているので余り作りこまれていないのだと思います。
UIが不便なので操作難易度が少し高くなっています。最近のファイアーエムブレムに慣れていると最初は不便さを感じると思います。
攻略
私は攻略サイトを見ながら進めていきました。
加賀氏のゲームは、イベントを逃すと仲間にならないキャラクターがいたり、特殊な会話イベントがあったりするので、自分でそれらを網羅しながらプレイするのはかなり難しいです。
過去の経験からそれが分かっていたので、最初から攻略サイトを見ながらプレイしています。
ネタバレがないようになるべく余り先は見ないで会話イベントの有無と入手アイテムの一覧だけを確認しています。
戦略的な攻略は一切見ないで勧めています。クリアした後に攻略サイトのクリア手順を確認すると全く違う手順でクリアしている事が多々あります。ですので、戦略の幅はそれなりにあります。
クリアまでのプレイ時間
正確には計測していないのですが、プレイ時間は相当長かったはずです。
クリアまでに一か月半かかっており、1章をクリアするのに10時間はかけていたと思います。休日丸まる使って1章しかクリア出来なかったということが普通にありました。
全部で20章ありますが、簡単に終わる章もあるので、おそらく150時間くらいでしょうか。
私のプレイ時間が長いのは全てのイベント、アイテムを回収して、全キャラクターをクラスチェンジさせていたからだと思います。クリアを目指すだけであればもっと短い時間で済むはずです。
ストーリーが気になるので早くクリアしたかったのですが、プレイに拘り過ぎました。
5ターンに1回しかセーブ出来ないので、やり直しにかかる時間がかなり長いです。プレイが上手い人ならもっと短い時間でクリア出来ると思います。
お気に入りの強いキャラクターが育ちきったら、後は無双して一気に終わらせれば良いと思うんですが、私の場合は他のまだ弱いキャラクターも育てないと!と、頑張ってしまうんです。
そしてそのキャラクターが死んでリセット…という流れになるのでどうしても時間がかかるプレイをしています。
音楽
戦記・軍記物としての音楽の出来がとても素晴らしかったです。
私が一番気に入っているのはワールドマップでのシナリオ進行時の曲です。ヴェスタリアサーガの公式PV(YouTube)で確認する事が出来ます。動画の11分45秒辺りからの曲です。
オープニングで流れる曲も公式PV(YouTube)で聴くことができます。こちらも旅をしている雰囲気が好きです。動画の28秒辺りからです。
齋藤博人氏による作曲らしくCDのみの販売ですがオリジナルサウンドトラックも販売されています。
Steamにて「Vestaria Saga I Soundtrack PIANO ARRANGEMENT & 8-BIT MUSIC」が販売されています。短いですがいくつかの曲を聴くことも出来ます。
Vestaria Saga I Soundtrack PIANO ARRANGEMENT & 8-BIT MUSIC VERSION on Steam
プレイ環境
ゲームパッドは必須です。
私は元々持っていたXbox Oneコントローラーでプレイしましたが、最新のXbox Series X用のコントローラーの方がおすすめです。
フルスクリーンでプレイ出来なかったのと、ウィンドウサイズの変更も出来なかったので、Windowsの”ディスプレイ設定”内の”テキスト、アプリ、その他の項目のサイズを変更する”で拡大してプレイしていました。
また、プレイ時間がある程度長くなるとFPSが落ちるのか操作しづらくなります。これはアプリを再起動する事で直ります。FPSが低下するとUIの反応が悪くなり操作ミスが増えるので、ちょっと厄介ですね。
まとめ
ゲームデザイン・ストーリー共に私が求めていたゲームそのものでした。
拘り抜いて自分なりの戦略を練る事が出来るバトルデザイン、特定の人物との闘いでのみ発生する演出、キャラクターがその時代を必死に生きている事が感じられるストーリー、それら全てが最高の出来でした。
そして、完結が楽しみです仕方がないですね。